2005年11月26日

1リットルの涙第六話「心ない視線」

亜也(沢尻エリカ)と母・潮香(薬師丸ひろ子)は愛犬・がんもの散歩中。
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『そろそろ寒い季節になる。私が思いっきり走って、身体を暖めたい。でも、また少し歩き難くなった。』

すれ違う人の視線が亜也に突き刺さる。でも、亜也は気にしない。
「あれ、ヒロじゃない?」
一人、シュート練習をする弟・弘樹(真田佑馬)。
「ヒロ。」
「弘樹。」呼びかけに答える弘樹。

「こんな時間まで、一人で練習?」亜也が言う。
「俺、シュートが下手だからさ。PKになるといっつもはずしちゃうんだよね。俺、今度こそ、試合に出たいんだ。」

亜也はたどたどしい足取りで、地面の石ころを拾う。
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「亜也、どうしたの?」
「ヒロ、ゴールの大きさわかる?」
「えっ、幅が五メーターで高さが二メーターちょっとだけど。」それを聞くと亜也は、橋の橋脚へ向かう。そこにはグレーのペンキが大きく塗ってある。
そこに拾った石で、印をつけていく亜也。それを見ていた潮香は亜也の意図を察し、石を拾って、亜也とは反対側から印をつけていく。
何事かと不思議そうに見つめる弘樹だが、やがてその意図を理解する。
亜也と潮香が描いた線は一つになり、ゴールができ上がった。
「こんな感じかな。・・・・いい、ヒロ、闇雲にシュートを打つんじゃなくて、ちゃんとこの枠の中を狙うの。頭の中で、イメージして、一本一本、丁寧に、大切にシュートするの。」
「イメージトレーニングってことね。」潮香が言う。
「そういう事。」
「うん、わかった。」そう言って、弘樹はシュートを打つ。
暖かく見つめる二人。

日も暮れて、三人で帰ることに・・・
「亜也姉ぇがサッカーに詳しいなんて、知らなかったよ。」
「ずっと、バスケ部だったもんねえ。」潮香が言う。
「サッカーもバスケも、イメージトレーニングが大事なのは一緒でしょ。」
「そっか、俺、絶対試合出て見せるからね。そしたら、亜也ねえ、絶対に応援にきてよ。」
「うん。」
「絶対だよ。約束。」
「うん。」
がんもが走っていく。追いかけようとする潮香と、弘樹。結局、弘樹が追いかけていく。
二人に挨拶していく買い物帰りの主婦たち。
すれ違うと、振り返り、亜也を好奇な目で見る。
「ねえ、今の池内さんとこの・・・」
「そう、一番上のお姉ちゃん。」
「えっ、ほんと?東校に通っているって言うお姉ちゃん?」
「そうよ。頭も良いし、スポーツ万能でね。でもね、詳しくは知らないけど、病気らしいわよ。」
「そうなの?気の毒ね。」
二人の会話を聞いていた弘樹、亜也の後ろ姿を見て、浮かない顔をする。
人の噂って嫌だなね。自分で詳しく知らないけど、って言ってるんなら、良くわかんないんだから、変な事言わなきゃ良いのに。って、自分もそんな事してるんだろうなあ・・・。反省。

「どうしたの、弘樹。」潮香が呼ぶ。
「なんでもない。」がんもを連れて戻ってくる。

『思いっきり、走る事は出来なくなったけど・・・・、ゆっくりとしか歩けないけど・・・・、それでも、私にもやれる事があるはず。』

大学病院の水野(藤木直人)の診察を受ける亜也。
「じゃあ、今度は左手で。」亜也は腕を動かす。
「だんだん、早く。」心配そうに見つめる潮香。

診察後はリハビリを行う。担当の田辺(小林正寛)が指導を行う。

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「最近は、日を追うごとに前向きになってるみたいです。」
亜也の書いたノートを見ながら、「そうですか。」答える水野はノートを読み進める。
『今日、歩く時、同じ側の手と足が一緒になってしまい、なかなか交互に出せなかった。』

「どうでしょうか?」潮香が聞く。
「文字の乱れはそれほど、進行していないみたいですね。」
「今度の薬は亜也に合ってたようで、以前より、調子が良いように思います。もしかしたら、このまま、治るんじゃないかって思えたりするぐらいで・・・・」
亜也の書いたノートを読む水野の顔が曇った。

『昼休み、お弁当の時、お茶を飲んだら、少しむせた。』

「もしかしたら、このまま・・・・」
「・・・・」返事のない水野に、「先生。」
「・・・あの薬は劇的に症状を改善すると言うものではなく、長期にわたって、症状の進行を抑制するというものですから。」
淡い期待を寄せる潮香だが、水野の言葉はこれまでと変わらない。
「・・・そうですよね。」
水野はずっと亜也のノートを見ていた。
潮香が去った後もずっと何かを考えている。深刻な表情に見える。

夕食の準備をする潮香、1皿だけ、亜也の為にハンバーグを切り分ける。
そこへ父・瑞夫(陣内孝則)が帰ってくる。やけに明るい。(いつもだけどね。)
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「みんな、喜べ。駅前のマークスーパーさんが、明日の特売日にうちの豆腐を扱ってくれるそうです。」
「ほんとに。」喜ぶ亜也たち。はしゃぐ瑞夫。食事をするみんな。亜也はホークを使っている。
「お父さんなあ、ばりばり働くからなあ。明日はな、隣町のスーパー、回ってくるから、亜湖、お前、学校終わったら、店番フー。」
「亜湖、でも無理、委員会があるの。」妹の亜湖(成海璃子)が言う。今度は弘樹に頼むが、サッカーの練習があると断れる。
「一日ぐらい、そんなもの、休んだっていいだろ。」
「だーめ!!ヒロは次の試合に出られるかどうかの、今が一番大事な時期なんだから。・・・あっ、私、店番やるよ。」
「えっ。」驚く瑞夫。
「部活も無いし、なんもする事ないから。」心配な瑞夫に対して、潮香は、
「大丈夫。そんなに心配しなくても。ね。」
「そうか、じゃあ、頼むよ。」
「うん。了解。」明るい亜也。

翌朝、学校にて、水槽の世話をする遥斗(錦戸亮)に近づく亜也。
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「おはよう。」
「おう。今日、一人?」
「うん、まりと早希は朝練。新人戦近いから。それに、いつも二人に甘えられないしね。」
「池内。」バスケの顧問が来た。
「おはようございます。」
「おはよう。どうだ、調子は?」
「まあまあって、感じです。」
「そっか、調子が良くなったら、いつでも戻ってこいよ。」
「この足ではバスケなんて、無理だつーの。ねえ。」
「それ取って。」気にせずに遥斗は亜也に頼む。
「えっ?」
「それ。」遥斗にしたがう亜也。普段と変わらず、接する遥斗の姿は本来有るべき姿なんですね。前回でも、障害者だからと言って、特別扱いはしない、出来る事は自分でやる。と言っていましたし、遥斗の接し方は相手にもよるけど、正常な姿と言えます。
部室までついていく亜也。
「人使い、荒くない?私、身体が不自由なんだよ。」
「いばんなよ。」
「別に威張ってないけど。」
亜也は遥斗に言われるままに生物部の仕事を手伝わす。これも遥斗の優しさかな。

でも、やっぱり、こういうのを喜ばない人っているんだね。
「なんか最近、あの二人、急接近って感じじゃない?」
「・・・・」
「いいの、のんびりしてたら、亜也にとられちゃうんじゃない?」
「とられるわけないでしょ。あの子に。」
遥斗が好きな圭子は二人が急接近しているのが気にくわない。別に急接近でも無いよね。前からだし、圭子が知らないだけ。

学校から戻った亜也は店番をする事に。
「わりいなあ。」
「ううん、私こそ、ごめんね。」
「なんで、お前が謝んだよ。」
「だって、私のために無理して、取引先増やそうとしてるんでしょ。」
「ばかやろう。つまんない勘違いすんじゃねえよ。お父さんなあ、豆腐に自信を持ってんだ。世界一の豆腐を一人でも多くの人に食べてもらいたいんだよ。」
笑顔の亜也。
「じゃあ、店、頼んだぞ。」
「いってらっしゃい。」

瑞夫は隣町のスーパーでご用聞き。少しでも商品を扱ってもらえるように頼むが、断られる。
スーパーのオーナーの息子が出てきた。亜也のクラスメイトだった。
「もしかして、亜也さんの親父さんじゃないですか?」
「ええ、そうですけど。」
「なんだ、知り合いなのか。」
「ほら、前、話した事あったろ、うちのクラスの池内の親父さん。」
「ああ、あの身体が不自由になったて子の?」
「親父!!」
「そうか、おたくも大変なんだな。」
「いえー、まー。」
「そういう事なら、しょうがないか。」
「えっ?」驚く瑞夫。
「わかった。明日から置いてみるか。」
「・・あ、有り難うございます。」同情された瑞夫は複雑な気持ちだった。 

一方、その頃店番をしている亜也、
馴染の客がやって来る。
「亜也ちゃんが、店番してるの。」
「はい、絹ごしですね。」そう言って立とうとすると、客は亜也を制止、自分で商品を取る。
「まったく、何考えてるのかしらね。亜也ちゃんを一人にするなんて。」
そこへ亜湖が帰ってきた。
「ちょっと、亜湖ちゃん、店番、代わってあげなさいよ。」
客に言われ亜湖は亜也に代わって、客の応対をする。
亜也は寂しそうに、見ていた。
陰でこそこそ言う人も悪いけど、この客のように、常連だからと言って、亜也に何もさせないで、自分でやってしまう事も、実は同じなんだよね。亜也を特別視している。亜也は普通の人と同じように接して欲しいのに。

大学病院の水野はネットで、脊髄小脳変性症の専門医を探していた。
水野の部屋に田辺がやってきた。
「珍しいな、お前が俺を呼び出すなんて。」
「すまない、頼みがあるんだ、神戸医大の岡崎教授を紹介してくれないか。お前、知ってるって言ったろ。」
「ああ。」突然の事に、驚く田辺。
「岡崎教授は若年性の症例をかなり診ているみたいだから。」
「どうしたんだ、急に。」
「思っている以上に、進行が早い。」
「亜也ちゃんが?」
頷く水野。亜也の書いたノートの『少しむせた』の部分を見せ、
嚥下(えんげ)障害が出始めているかもしれない。」
「そうか、でも、今、焦った所で、すぐにどうこうなる病気じゃないってことは、お前が一番良くわかっているはずじゃないか。」
「とにかく頼む。力を貸してくれ。」語気を荒げて言った。

学校の生物室、
恩田たちがふざけている所へ、圭子がやって来る。
「恩田君、生徒会のアンケートの集計、まだなの?」
「あ、わりい、忘れてた。」
「少しはクラス委員の自覚、持ってよ。」ヒステリックな圭子。その彼女が遥斗のそばへ行く。
「遥斗、なんか手伝おうか?」さっきと全然声が違う。
「いいよ、別に。」
「池内さんには手伝えって、言ってたじゃない。」
「あいつは、暇そうだったから。」
「あたしだって、暇だよ。」
「なら、アンケートの集計、手伝ってよ。」恩田が言う。もっともです。
「それは恩田君の仕事でしょ。」明らかに、接する態度も言葉遣いも違う。
圭子は横目で遥斗を見ながら、怒って出て行く。
「もう少し、優しくしてあげたら。富田さんて、麻生君の事好きなんですよ。」他の部員から言われる遥斗。さらに、恩田にも、「そうだよ、じゃないと、俺がとばっちり、受けんだよ。」
彼らの言葉を聞き流す遥斗。

放課後、亜也が下校しようとし、バス停へと向かっていた。そこへバスがやって来た。急いで、走り出す他の生徒達。亜也もそれを見て、急ぐ。
ちょうど、遥斗がそこに通りかかり、亜也を見つめる。明らかに、その目は優しい。
バスの乗る生徒達はすでに乗り込んでいた。急ぐ、亜也。
やっとの事で、乗車口のたどり着く。息が切れている。やはり、かなりきついんだろうね。バスケをやっていたから、体力は普通の人よりあると思うけど。
「すいませんでした。」
彼女をのぞき込んで、運転手は「急がなくて、いいからね」と言う。
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乗客たちは、好奇の目で彼女を見る。
亜也は身体障害者手帳を見せる。
「それじゃあ、半額の、百二十円になってます。」運転手が言う。
ますます、乗客たちの目は亜也に向けられる。嫌な視線が。
お金を入れて、乗り込む亜也。
そこへ座っていた客の一人が立ち上がり、
「あなた、ここ座りなさい。」遠慮する亜也だが、それでも、勧める。
「遠慮しないで、転んだら大変だから。」
「すいません。」
乗客たちの視線が亜也に突き刺さる。考えてみれば、私たちも無意識のうちに、そういう事をしているのかもしれない。
遥斗はずっと亜也と見ていた。

弘樹はサッカークラブの練習をしていた。もうかなり暗い。
監督が集合をかける。集まる部員たち。今度の試合のメンバーを発表した。
名前が呼ばれるのを不安げに待っていた弘樹だが、最後に呼ばれた。
驚く弘樹、と同時に、他のメンバーから、「中山じゃねえのかよ。」との声も。
「池内か・・・・、あいつ最近うまくなったからなあ。」
池内を見つめる中山。
選手に選ばれた弘樹の元に集まる部員たち。
「何で、うまくなったんだよ。」
「姉ちゃんに教えてもらったから。」誇らしげに言う弘樹。
「知ってる、すっげー美人なんだよな。」「まじ?」
「亜也姉ぇは、美人だし、頭も良いし、スポーツも出来る、何でも知ってるんだぜ。」
「すっげー。」
「池内の姉ぇちゃんに会いてえ。」
「試合、応援に来るよな。」
「うん、多分。」

家に帰った弘樹はみんなにユニホームを見せる。
喜ぶ瑞夫たち。
「ヒロ、絶対に応援にいくから。」亜也が言う。
「うん。」
「理加もいく。」
「それじゃあ、弁当作って、みんなで応援に行くか。」
瑞夫の言葉にちょっと驚く弘樹。

「あのさあ、亜也ねえ、試合の応援、無理して来なくていいからね。場所、遠いし。」弘樹が言う。
「大丈夫だよ、絶対に行くから。」弘樹は素直に喜べない、そんな弘樹がちょっと気になった亜湖。
亜也は、弘樹のユニホームに名前を刺繍する。
「なにやってるの?」亜湖が聞く。
「うん、ヒロのユニホームにね、名前縫い付けてるの。」
「そんなのお母さんにやってもらえばいいじゃん。」
「こういう手作業もリハビリだったりするんだよね。・・・・イタッ。」
「大丈夫?」
「平気、平気、我ながらヘッタくそだよね。・・・あっ、そうだ、明日、買い物付き合ってくれない?」
「良いけど。」
「うん、ありがと。」亜湖は優しくなりましたね。表情も素敵です。可愛いです。

瑞夫と潮香は、仕事の準備をしていた。
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「良かったわね、取引先増えて。」
「ああ。」瑞夫の返事はそっけない。
「お父さんのお豆腐、本当におしいから。きっとこれから、もっと忙しくなるわよ。」
「この間、取引オッケーしてくれたスーパーのオーナーさんな、亜也のクラスメイトの親御さんなんだよ。」
「そうなの。」
「最初は渋ってたんだけど、亜也のこと知って、置いてくれるって・・・・」瑞夫の表情は暗い。
「じゃあ、亜也に感謝しなくちゃね。」逆に潮香は明るい。
瑞夫は作業を止めて、
「おい、お前、な・ん・と・も・思わないのか。」
「何が?」
「いや、だから、だからさー、・・・・純粋な気持ちでうちの豆腐を置いてやろうってことじゃないわけだろ。」
潮香も作業を止め、瑞夫を見て、
「同情だってこと?」
「・・・・」
「もし、そうだとしても、同情って、そんなに悪い事かなあ。」
「えっ?」
「同情って、人の悲しみや苦しさを自分の事と同じように思う事でしょ。」
「ああ。」
「きっと、亜也、病気になって、今、いろんな人の視線を感じてると思うの。偏見や差別の視線に負けないで欲しい。乗り越えて欲しい。」
「・・・・」
「でもね、中には本当の思いやりを持った視線もあると思うの。それはちゃんとわかる子でいて欲しい。難しい事かも知れないけどね。」
「・・・・」
「お父さん?」
「・・・大丈夫だよ、俺とお前の子供だぞ、きっと乗り越えてくれるし、人の気持ちもわかる子だ。俺って、ちっちぇえなあ。ほんと、お前と亜也に比べると、ちっちぇえよ。おれも、がんばなきゃな。亜也に、負けてらんねしいよ。」
「そういう事。」潮香は強いですね、そしてよくわかっています。この母がいれば、亜也は大丈夫って思えます。もちろん、瑞夫も。(笑

翌日、スポーツショップに買い物に来る亜也と亜湖。
タオルを探す亜也。その歩く姿にまだ幼い子供は、
「ねえ、なんで、そんな変な歩き方しているの?」
「・・・・」笑顔の亜也。
子供の親がやってきて、「すみません。」と謝って、連れていく。けれど、親の方が始末に負えない。亜也に聞こえるのに、「そんな事言うもんじゃないぞ、あの、お姉ちゃんは身体が不自由なんだからね。」
亜也は気にしない。けど、心の中は・・・、そして、亜湖はそんな亜也を気にする。

ちょうど、弘樹のクラブの仲間が店にいた。
亜也の後ろ姿を見て、
「なんだよ、あの歩き方。」クラブの仲間にも知れてしまいました。

シュート練習をする弘樹の元へ、仲間がやってくる。
「池内、お前って、嘘つきだよな。」三人が笑っている。
「えっ?」
「何がスポーツの得意な美人の姉ちゃんだよ。」
亜也の真似をして見せる中山。笑う他の二人。
「・・・・」何も言い返さない、いや言い返せないのか・・・・。
そこへ川の水質調査を終えた遥斗が通りかかる。弘樹たちを見つめる。
「ちゃんと、歩けねえ姉ちゃんがサッカーを教えるなんて、無理じゃねえか。」
「ほんとだよ、ほんとに教えてもらったんだよ。」
「信じらんねえよ、そんなの。」
「嘘つき!!」
「嘘つき!!」三人の嘘つきコールに黙ったままの弘樹。そして、弘樹からボールを奪う。
弘樹をもてあそんだあげく、ボールを川へ蹴る。慌てて拾いに行く弘樹だが、ボールは空しく川に浮かんでいる。それを見つめる弘樹・・・・。

家に戻った弘樹はボールを無くしたと言う。
「ボール無くしちゃったの?」潮香が言う。
「うん。」元気の無い弘樹。亜湖の怒った顔が怖い。
「どこで、良く探したの?」
「うん。」
「もう一度探そう。」亜也がそう言って立ち上がろうとする。
「一緒に探してあげるから。」
「いいよ。」弘樹が断る。
「良くないよ。」
「いいって!!」強く断る弘樹。
「・・・・」
「俺、もう試合に出れないかも知れないから。」
「どうして?」
「どうしても!!だから、亜也姉ぇ、試合に来なくていいから。」そう言って、自分の部屋に入っていく。
「ヒロ・・・・」亜也が言う。
「弘樹!!」潮香が呼ぶが、返事はない。
その時、遥斗がやってくる。
「麻生君。」
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「あら、こんばんは。」潮香が言う。
「こんばんは。」
「あっ、それ!!」亜也が言う。
「たぶん、お前の弟のだと思うけど。」
「見つけてくれたんだ。ありがとう。」
「いや・・・」
「弘樹!」潮香はもう一度弘樹を呼ぶ。「麻生君がボール見つけてくれたわよ。」
降りてきた弘樹にボールを渡す遥斗。

遥斗が帰る時、弘樹が見送りに出てきた。
「そっか、もうすぐ試合なのか。」
「うん。」元気の無い弘樹。
「がんばれよ。」
「うん。」
「それからさあ、大事にしろよ。」
「えっ?」
「・・・ボールも、姉ちゃんも。」
「・・・・・」何も言えない弘樹。
そこへ亜也がやってきた。
「麻生君、・・・・・ありがとね。気をつけて。」
遥斗が帰ると、さっさと家に入ってしまう弘樹、遥斗の気持ちは伝わらない。
そして、弘樹を見つめる亜也の切ない顔。弘樹が心配でならない。

まりと早希が亜也を迎えにきた。図書館へ行くと言う。

潮香は弘樹が忘れたサッカークラブの月謝を亜湖に持って行ってくれるように頼む。なんか、昔なら、断りそうな亜湖だけど、やっぱり優しくなっているね。

亜湖は弘樹に頼まれた月謝を渡す。
それを見ていた中山が、
「あれー、こっちの姉ちゃんはちゃんと歩けるんだ。」
他の子も集まってくる。
「池内のお姉ちゃんですよね。僕たちにもサッカーを教えてください。」
「えっ?」
「この姉ちゃんじゃねーよ。それに、もう一人の姉ちゃん、サッカーを教えるなんて無理だって。」
「・・・・・」
「ちゃんと歩けねえんだぜ。そうだよな、池内。だから、紹介なんか出来ねえんだよな。」
「・・・・・」弘樹を見つめる亜湖の目が厳しい。
「お前さあ、姉ちゃんにサッカーを教えてもらうより、歩き方、教えてやった方が良いんじゃねえのか!!」
中山を突き飛ばす亜湖。
「あんたなんか、スポーツする資格はない!!」
さらに弘樹に向かって、
「何で、黙ってんの。亜也ねえのこと、あんなふうに言われて、腹立たないの。」
「・・・・そりゃ。」
「何で言い返さないよの!!」
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「だって、しょうがないじゃん。」
「しょうがない?何がしょうがないのよ!!」
「・・・・」
「あんた、亜也ねえのこと、カッコ悪いとか、恥ずかしいとか思ってるの?」
「・・・・」まったく返事の無い弘樹。
亜湖は弘樹の腕をつかみ、家まで連れて帰る。


そして居間に入る。
「あいつも最低だけど、あんたはもっと最低だよ。」
「亜湖、どうしたの?」亜湖のただならぬ雰囲気に潮香も瑞夫も集まってくる。
「何が恥ずかしいの!!・・・亜也ねえの何が恥ずかしいの。」
ちょうど、亜也が帰ってきたが、家には入れず、外で待つ事に。
「亜也ねえはすごいじゃん。」
「・・・・・」弘樹は黙ったまま。
「亜湖・・・」心配して、潮香が声をかける。
「なんか有ったのか?」瑞夫が言う。
「亜也ねえ、毎日がんばってリハビリして、・・・・あんなに明るくて、・・・・もし、私が亜也ねえみたいな病気になったら、あんなふうに外に出る勇気はないよ。・・・・じろじろ見られたり、変な事言われたら、あんなふうに笑ってられないよ。・・・・私、初めて、亜也ねえってすごいって、ほんとそう思った。」
亜湖は弘樹のユニホームを持ってきて、
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「これ、亜也ねえがつけたんだよ。」ユニホームの刺繍を見せる亜湖。
それを見て驚く弘樹。
「亜也ねえにとって、このネーム、縫い付ける事がどんなに大変だったか、あんたわかる?」
「・・・・」
「何時間もかけて、つけたんだよ。寝る時間、削ってつけたんだよ」
弘樹の目から涙がこぼれる。
「ヒロ、あんたここまで出来る?・・・・亜也ねえのためにこんなに一生懸命になれる?何で亜也ねえのこと恥ずかしいと思うのよ!!」ユニホームを顔に叩きつける亜湖。
「亜湖、もういいから。」潮香が止めに入る。
「そんなふうに思ってるあんたの方が、よっぼど恥ずかしい!!」
「もういい、もういい。」潮香は亜湖を抱きしめる。亜湖は泣きじゃくる。
瑞夫は弘樹の頭を押さえて、
「弘樹、亜湖の言ってる事わかるよな。」
「・・・・」頷く弘樹。
今度は肩に手を乗せ、
「お前、・・・・・今、お前のここ、痛えよな!!」右の握りこぶしを胸に当てて言う。
頷き、「ごめんなさい。」
弘樹を抱きしめる瑞夫。「よし、それでこそ、俺の子だ。」
外で聞いていた亜也は思わず、涙が溢れた。亜也はもう一度、外へ出て、街を歩き出す。そして、人のいない所でしゃがみ込み、泣き、思いを巡らせた・・・・。
亜湖の成長ぶりに驚かされます。一歩間違えれば、亜湖だって、もしかしたら弘樹のような思いを抱いたかも知れません。けれど、亜湖はしっかりと亜也を見ていました。そして、誇りにさえ思ってます。それがうれしいです。そして、一家の暖かさ、優しさ。亜也が明るくがんばれるのもこの家族がいるからなんでしょうね。

夜、暗くなってから亜也が帰ってきた。表情は明るい。どこで何してたんでしょうね。
弘樹が二階から降りてきて、亜也を見る。その顔はごめんなさいって、言っているようだ。
「ヒロ、ごめん、私、試合の応援行けなくなっちゃったの。・・・・今後の日曜日ね、急な用事が入っちゃって、ほんとにごめんね。」
「うん。」
弘樹を見つめる亜湖。「急な用事って何?」
「あーん、まりたちと一生に映画見に行くって。」
「そんなの断ればいいじゃん。」亜湖が言う。
「断れないよ。まりと早希にはいろいろと借りがあるからさ。」
亜也は買っておいたタオルを出し、
「ねえ、ヒロ、これ、今度の試合の時に使ってね。」ヒロに渡す亜也。
「ありがとう。」
もらったタオルを見つめる弘樹、そんな弘樹を見つめる亜湖。

翌日、
遥斗と亜也は生物室にいた。
「明日も手伝うから。」
「明日って、弟のサッカーの試合だろ。」
「うん、でも私、行かないことにした。」
「何で?」
「・・・・」
「私はね、まわりからどんな目で見られても、平気。でも、ヒロの気持ちまでは考えてなかった。ヒロ、辛かったろうなあ。優しい子だから。」
「・・・・」
「最低のお姉ちゃんだよね。」
「・・・・なら、行けば。」
「・・・・」
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「お前の弟、まずいことしたなあって、後悔してんじゃない。ほんとは来て欲しいって思ってても、言えないだろうし。」
「・・・・」
「男ってのは、繊細だから。」そう言った遥斗の目には回るく顕微鏡の跡がついていた。
それを見て、笑う亜也、
「何、それ?」
「えっ?」
「その顔。」
慌てて鏡をのぞく遥斗。
遥斗はいいやつだよね。亜也にとっても、良き理解者であり、良きアドバイザーでも有る。それは池内家にとっても同じ事。でも、遥斗は家では・・・・。

そして、試合の当日、潮香はお弁当作りに忙しい。
弘樹は荷物をカバンに入れていた。そして、亜也が縫ってくれたユニホームのネームを見る。
潮香から、水筒とおしぼりをもらい、カバンに入れ、出て行く。
「行ってきます!!」
「行ってらっしゃい。後でお弁当持って行くからね。」

部屋で寝ていた亜湖はその声に目が覚め、
「まったく、ヒロもお母さんも声でか過ぎ。」そう言いながら、起きる。
亜湖は亜也の様子をうかがう。亜也は寝たふりをする。

亜湖は何かを見つけたらしく、亜也を呼ぶ。
「亜也ねえ。起きて。」
「うーん。」亜也は起きようとしない。
「映画行くの、ほんとなら断った方がいいかも。」
「ほんとだよ。」まだ起きようとしない。
「そっか・・・・」亜湖は出て行く。
亜湖が出て行ったのを確認して、亜也は起き上がる。そして、何かを見つける。
テーブルに置いて有ったのは弘樹からの試合の招待券(本当は招侍券)。

亜也がその招待券を眺めていると、潮香が入ってきた。
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「行こうよ、亜也。」
「お母さん・・・・」
「こんなに弘樹が頼んでるじゃない。」
ずっとうれしそうに眺めている亜也。
「いいのかな?私なんかが行ったら・・・・」
「何言ってんのよ。ちゃんと読んでよ。弘樹、書いてるじゃない、絶対に来てくださいって。お願いしますって。」
涙を浮かべながら、頷く亜也。


試合会場に来た亜也たち。
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弘樹を見つけ、声援を送る。
弘樹は、
「あれが亜也姉ぇだよ。すっげー、美人だろ。うらやましいだろう。」
弘樹は仲間たちにしっかりと亜也を紹介した。
潮香が、
「亜湖のおかげだね。」
「・・・・」
「さすが俺の子だ。」
「うざい!!」

試合が始まった。
亜湖が、
「こういう時、間違えないで欲しいよね。ご招待の待、間違ってる。」
「ごうしょうざむらい(ご招侍)、ご招待の待が侍になっとるぞ。」
「亜也、今夜から、弘樹の漢字の特訓、よろしくね。」潮香が言う。
「了解。」

試合では、弘樹がPKをもらい、見事に決める。亜也姉ぇの言葉を思い出して・・・

『心ない視線に傷つく事も有るけれど、同じくらいに優しい視線が有る事もわかった。』

だから 私は絶対に逃げたりはしない
そうすれば きっといつか


今回も、涙無くしては見れませんでした。
サブタイトルからして、その内容は容易に推測が出来ますが、やはり辛いものですね。
残念ながら、物語で起こるような事は、日常でも起こる事です。
私たちはどうしても、障害者の方を特別な目で見てしまいます。そして、接し方も。
前回で触れられていましたが障害者の方も積極的に社会に参加しなくてはいけないとなっています。そういう意味で、遥斗の態度は自然で、適切なのかも知れません。まあ、相手しだいですけど。

今回、どうしても聞き取れない言葉が有りました。それで、ネットで脊髄小脳変性症を知らべてみました。いろんな症例が有るんですね。知りませんでした。
で、何件かの、HPを読み、ようやく言葉の意味がわかりました。
これは水野が危惧していた事です。今後、出てくるかも知れません。

公式HPはこちら

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この記事へのコメント
こんばんは。
こちらでもgooへのTBが出来ないんですか。
それは困ったもんですね。
早くスッキリしたいものですね。
Posted by SHINGO。 at 2005年11月28日 23:57
SHINGO。さんへ

こんにちは。

>こちらでもgooへのTBが出来ないんですか。
それは困ったもんですね。
早くスッキリしたいものですね。

なんか、呪われているのかな・・・・(笑
ブログ変えた意味がない。

新館の方に来てくれて、ありがとうございます。うれしいです。
Posted by 直美 at 2005年11月29日 10:27
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成海璃子さん・真田佑馬クンの似顔絵。「1リットルの涙」
Excerpt: 公式サイトで、来週の第7話の予告を読んでたんですが、 予告編にも映ってた養護学校の女性・大西麻恵さんと、 その母親のかとうかずこさんは、映画「1リットルの涙」で 亜也と潮香を演じられてたんですね。..
Weblog: 「ボブ吉」デビューへの道。
Tracked: 2005-11-28 23:56
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