2005年12月09日

1リットルの涙第九話「今を生きる」

「これが電動の車いすです。じゃあ、早速練習始めようか。」
「はい。」亜也(沢尻エリカ)の表情は硬かった。それを見つめる母・潮香(薬師丸ひろ子)。
電動車いすを操作する亜也に向かって、潮香が、
「どう?」
「風が気持ちいい。」亜也に笑顔が戻った。
n90

「歩ける所はなるべく自分で歩くって言ってたけど、一人で自由に動ける喜びは大きいみたい。」
「そうか。」父・瑞生(陣内孝則)が言う。
「養護学校持っていけば、活動範囲も広がると思う。」
「ああ、でも、やっぱり心配だなあ。宿舎生活って言うのはよ。
だって、あいつ、案外さみしがり屋だろ。」
「大丈夫よ・・・・。大丈夫。
だって、あの子が自分で決めたことだもの。
私たちが笑って送りださないで、どうするのよ。」
「そうだな。」

瑞生は遥斗(錦戸亮)を見つけ、無理やり車に乗せ、家まで連れてくる。
「おーい、今帰ったぞ。」
瑞生の後に続く遥斗。ちゃっかり手伝わされている。
「麻生君・・・」亜也が言う。
「親父さんが・・・」
「おう、俺が呼んだんだ。
新作のおぼろ豆腐、食わしてやろうと思ってな。」
「久しぶり。」亜也が言う。
「ああ・・・」
「池内亜也!!ってか。」からかう瑞生。
完全に瑞生のペースにはまる遥斗。大変だね。
遥斗は理加(三好杏依)の小学校入学パーティーに呼ばれたのだ。
「理加、小学校入学、おめでとう。」潮香が言う。
みんなの拍手が起こる。
瑞生が、理加にピンクの筆入れを渡す。
「はい、理加、これはお祝いだ。思う存分書き綴れ!!」
「ありがとう。」
それを弟の弘樹(真田佑馬)が取り上げ、値札を見る。
「八百八十円、随分安上がりに済ましたな。」
「うるせえ!!」
「亜也は明日から寄宿舎の生活になるけど、がんばってね。」潮香が言う。
「うん。」
優しい顔で見つめる遥斗。
「お父さんのことが恋しくなったらすぐに言うんだぞ。三十秒で迎えに行くからな。」
「大丈夫。」
「いい加減、子離れしなよ、ストーカー親父。」亜湖(成海璃子)が言う。
「このバカ娘!!」
「お母さんね、亜也にも入学祝い用意したんだ。」
「えっー?」
「はい。」潮香が出したものは携帯電話だった。
「携帯!!」亜湖がうらやましそうに言う。
「おい、潮香、お前、子供に携帯なんて十年早いっていっつも言ってるだろう!!」昔の人間て感じですね。役柄通りって感じ。(笑
「亜也はこれから離れた場所で生活するのよ。」
「そりゃ、そうだけどさあ。」
「何かあったら、すぐに連絡取れるじゃない。」
「そりゃ、そうですけど・・・・」
「亜也がお父さんと話したくなったら好きな時にうちに電話も出来る。」
ころっと顔色が変わった瑞生は、
「大事に使いなさい。」わかりやすいお父さんです。(笑
「ありがとう。」
「私にも買って。」亜湖が言う。
「理加も。」理加ちゃんは早すぎるでしょ。
「バカやろう。お前ら、三百万年早いんだよ。」
「何番?」遥斗が亜也に聞く。
n91

遥斗の携帯を押さえ、
「色気づいてるんじゃねえ!!
亜也、いいか、こいつに番号だけは教えるなよ。」瑞生が言う。

遥斗ががんもを可愛がっている。
n92

「ごめんね、お父さん、相変わらずで。」
「もう慣れました。」
「東高も明日、始業式でしょ?」
「うん。」
「じゃあ、明日から本当に学校別々になっちゃうんだ。」
「何?寂しいの?」
「そういうわけじゃないけど。」
「学校のみんなにお前がようやく携帯持ったって、宣伝しといてやるよ。
何番?」
「色気づいてるんじゃねえよ。」
びっくりする遥斗。笑う亜也。
「・・・なんてね。」亜也はうれしそうだった。

『春が来た。
誰もが心を弾ませる季節なのに、
今の私には養護学校のコンクリートの壁が目の前に立ちふさがっているように見える。
それでも季節は何も知らないような顔をして私の前を通りすぎていく。』

養護学校へ入っていく亜也と潮香。

「池内さん。」まどか(浜丘麻矢)が声をかける、やがて亜也の元にきて、
「はじめまして、担任の藤村まどかです。」
「よろしくお願いします。」

校内を案内するまどか。
「にぎやかでしょ。生徒に先生、ヘルパーさん。
食事は一人一人に合わせたメニューを栄養士さんが考えてくれるの。」
通りかかった生徒が挨拶していく。亜也は返事するが緊張している様子だ。
「看護士さんも二十四時間いてくれるから、安心ね。
あっ、高野さん、紹介します。仕事がお休みの時に手伝ってくれているボランティアの高野さん。」
「高野喜一です。たまにしか来れないけど、顔覚えてね。」優しそうな高野(東根作寿英)が言う。
「はい。」
「池内です。よろしくお願いします。」
亜也は壁に貼って有る生徒の作った作品に気づき、近寄る。
「これはみな、この学校の生徒の作品です。」
「・・・・」
「何か出来ることを見つけて、それぞれ自分なりにがんばってるんですよ。」
亜也は生徒の作品に見入る。

「じゃあ、こちらで失礼します。
家を長く離れるなんて、初めてのもので、慣れないこともあると思いますが、
先生、よろしくお願いします。」深々と頭を下げる潮香。
「じゃあね。」笑顔で言う亜也。
「・・・・大丈夫?」
「大丈夫。」
「じゃあ、がんばってね。」
「それじゃあ、行きましょうか。」まどかが言う。
「はい。」
n93

手を振る亜也。亜也の後ろ姿を見つめる潮香。
潮香は校舎を出て、車に戻る途中、何度も振り返る。
涙をこらえる潮香。

亜也は自分の部屋へと連れてこられる。
部屋は結構広い。
「あれ、いないな。」

まどかは部屋を出て、相部屋となるもう一人の生徒の所へ行く。
「いた、明日美ちゃん。」まどかが呼ぶ。
花に水を巻いていた明日美(大西麻恵)は二人に気づき、笑顔で、
「こん・にち・は。」以前主治医の水野(藤木直人)に紹介されて潮香が会いに来た彼女だった。
明日美の元に近寄り、亜也は、
「こんにちは。」
「同室の及川明日美ちゃん。一つ先輩だから、いろいろ聞くといいよ。」
「よろしくお願いします。」
「待ってたよ。」
「・・・・」びっくりする亜也。
「池内・亜也さん・だよね。」
n94

「・・・・」頷く亜也。
「私もおんなじ・病気。」
「えっ?」驚く亜也。
「そっち・でも・私が先輩だから・なんでも・相談して。」
亜也に近づき、握手する二人。
「きれいで・しょ?ここの・花壇。
私、水と・お日さまの・光・浴びて・きらきら・してる・花が・一番・好き。」
明日美の笑顔を見て、亜也も笑みがこぼれる。

瑞生は電話の前で、電話をしようか悩んでいる。
「潮香、あいつもう風呂入ったかな?
もう寝る頃か?」
「そんなに気になるんならかけてみればいいじゃん。」亜湖が言う。
「あっー、気づかなかった。やっぱりかけるべきか?
・・・・お父さん、一番乗り。」うれしそうに電話をかける瑞生。

亜也の携帯が鳴り、出るが、
「もしもし・・・」
「あっ、俺。」
「麻生君!?」びっくりする亜也。
「特に用ないけど、誰からも電話きてなかったら、可哀想だなあって思って。」
「当たり!!麻生君が第一号。」
「あれ、親父さんは?」

その頃瑞生は亜也の携帯にかけていたが話し中。残念!!
「誰だ?誰と話してるんだ!!」
「そんなの決まってんじゃん。」亜湖が言う。
「はっ?」
「だから、麻生さんと話してるんだって・・・・」そう言ってさっさと二階へ上がる亜湖。
「なにーっ!!
だから、俺は携帯はダメだって言ったんだ!!
潮香!もとはと言えばなお前が・・・」
「私もお風呂に入ってこよっと・・・」潮香も部屋を出ていく。

遥斗と亜也は話し込んでいた。
ちょうどその時、帰宅した遥斗の父・芳文(勝野洋)が遥斗の声を聞く。遥斗って部屋ぐらい閉めたらどうなの。

明日美が不自由な身体で、布団を敷いている。それを見つめる亜也。
『正直、まだ養護学校の生徒だと言う実感はないけれど、がんばろう。
今日からここが私の居場所なんだから。』

潮香は亜也の主治医の水野のもとを訪れていた。
「転校して、もう二ヶ月になりますし、寄宿舎の生活にも慣れてくれたようで、安心しました。」
「そうですか。」
「はい。」
「先日の診察検査結果ですが・・・・、正直、良いとは言えません。」
「・・・・」
n95

「これが亜也さんの小脳症状の悪化を表す数値です。
今までのデータに比べて、極端な下降線をたどりはじめてます。
病状としては次の段階に入ってるとお考えください。
今後、予想される症状として、飲み込む力が低下し、食事も固形物は難しくなります。
誤嚥の危険も増します。
滑らかな発話が難しくなって、言葉が聞き取りにくくなっていくことが予測されます。
四肢の機能が低下し、転倒が大きな怪我に繋がるケースも考えられますし、風邪を引いただけで肺炎のような合併症を引き起こすこともあります。」
「はい。」
「養護学校の先生方も注意していらっしゃると思いますが、大事に至ることがないよう、ご家族で見守ってあげてください。」
「はい。」大きく頷く潮香だった。

亜也は明日美が食事中に詰まらせて咳き込んだり、部屋で一生懸命にハーモニカを吹き、発生のリハビリをする姿を見る。

リハビリでボールを持っている亜也、
「ゆっくりでいいから、もっとしっかりゴール狙ってみて。」まどかが言う。
「はい。」
その時、高野がまどかに呼ばれていく。
そこへ明日美がきて、
n96

「まどか先生と高野さんって、付き合ってるんだって。」
「へぇー。」
「いいなあ。いつも彼氏と一緒で。」
「こら、そこ、よけいな話しないの!!」まどかが怒る。

『及川明日美さん、笑顔が可愛くて素敵な人。
なのに私はどうしても彼女の姿に症状が進んだ自分を見てしまう。』

亜也は自分で言ってたように歩ける所は自分の足で歩くようにしていた。
「どうしたの?」まどかがやってきて言う。
「すいません。洗濯していたら・・・・」
「昨日も遅れたわね。移動は電動車いすを使ったら良いんじゃないかしら。」
「でも、なるべく自分の足で歩きたくって。」
「亜也ちゃん、もっと生活のペース配分を考えてね。
どこまでは自分でやって、どの程度、補助をしてもらうか、自分の中で折り合いをつけることも大事よ。」
「でも・・・・。」
「周りのペースにどうやって合わせていくか考えることも、必要だと思わない?」
「・・・・はい。」

『先生の言うことはわかるけど、・・・・怖い。
・・・・車いすに頼るようになったら、もう歩けなくなっちゃうような気がして・・・・・・。』

図書館の閉館時間に間に合わない亜也。それでも歩いていく・・・。

遥斗は文化祭の準備のために図書館に来ていた。
そこで勉強している亜湖と出会う。
「受験勉強?」
「うん、亜也姉ぇに約束しちゃったし。
せっかくだから、東高でも受けてやろうかなーと思って。」
「へえ。」
「まあ、駄目元だけどね。」
「あっ、ここ違う。」
n97

「へっ。」
「それとこことここも違う。」
「へっ。いやー、もー、やっぱ奇跡でも起こらない限り東高無理かな?」
「お前、ほんとにあいつの妹?」
「そういうこと言わないでよ。」哀しそうな亜湖。
「ごめん。」
「でも、亜也姉ぇの真面目さが少しでも私にあればなあ。
亜也姉ぇ、休みの日に帰ってきても最近あんまり元気ないの。
養護学校でもがんばりすぎてるんじゃないかな・・・・。」
その言葉を聞いて、心配そうな遥斗。

部屋にいる亜也、そこに携帯が鳴る。相手も見てほほえむ亜也。
「麻生君。」
「今日、お前の妹と図書館で会ったからさあ。その、どうしてるかと思って。」
「元気だよ。麻生君は?」
「・・・まあ、そこそこ。」
「学校はどう?」
「今は毎日、文化祭の発表の準備。」
「もうそんな時期かあ。何の発表?」
「海の七不思議。ウミガメの涙とか、マンボウの昼寝とか、人間には聞こえないイルカの声とか。」
「へーっ、なんか面白そう!!」
「今度の休み、暇?」
「えっ?・・・うん。」
「・・・水族館行くんだけど、お前も行くか?」
「・・・お母さんに相談してみるね。」うれしそうな亜也。
「無理すんなよ。」

「デートの約束・だ。彼氏?」明日美が言う。
「あっ、違います!!高校のクラスメート。」
「違う・んだ。いつも、携帯そばにおいて、鳴るの待って・る・みたいだから。」
「・・・・」
「どんな人?」
「うーん、最初に会った時はね、変な奴って思ってて・・・
口は悪いし、態度は大きいし、すぐに嘘つくし。」
「うん。」
「でもね、すごく私が辛い時はなぜかいつもそばにいてくれて。
それにねえ、不思議なんだけど、麻生君といる時だけは、私、いつの間にか自分が病気だってこと、忘れてるんだあ。」
「ふーん、なーんか、のろけられちゃったなあ。」

遥斗の部屋に入ってくる父・芳文。
進路希望調査票を見て、
「もう進路は決めたのか?」
「・・・いえ。」
「親や親戚に合わせることはない。しっかり考えて、自分の好きな道に進めばいい。」
思わず父の顔を見上げる遥斗。芳文はさらに続ける。
n98

「しかし、池内さんのことは、別だ。
あの子がこれから先、どうなっていくか、お前もわかっているだろう?」
「寝たきりになるような子と関わるなと言いたいんですか?」
「そうじゃない。どれだけの覚悟があって、あの子と関わっているんだと聞いているんだ。
お前、あの子のこと、好きなのか?
これから先も、何年も何十年もあの子の側についてやると約束でもしているのか?」
「約束なんて。そんな・・・・。俺達は・・・・。」
「ただの友達か・・・、でもなあ、症状の進んだ彼女がお前を必要としたらどうする?
血の繋がった家族だって、介護に疲れきってしまうこともあるんだ。
並大抵のことじゃない!!
今が楽しいからそれでいい。そんな自分勝手な考えではすまないんだ。
良く、考えなさい。」
父は出て行った。
遥斗の進路に関して、これまでの主張を変え、自分の好きな道を歩めと言う父。しかし、一方で亜也に関しては関わるなと言っている。(遠回しにそう聞こえる。)
芳文の言い分は正しい。でも、二人は若い、先のことを考えるより、今出来ることを考えた方がいいのでは?

養護学校へ亜也を迎えにきた遥斗は学校の看板を見て、思いにふける。
「麻生君。」亜也が出てきた。
笑顔で迎える遥斗。
「すっげー久しぶり。」
もう一台の車いすが遥斗に近づく。明日美だった。
n99

「こんに・ちは。」
「どうも。」
「及川・明日美・です。麻生・君・だよね。どんな人か会いたくて。
亜也ちゃん、いっつも麻生君の話ばっかり・する・から。」
「ちょっと・・・」

二人で出かける遥斗と亜也。
「明日美さん、おんなじ部屋なんだ。」
「へーっ。」
「同じ病気なの。」
「・・・・」顔が少し曇る。
「明るい人でしょ?」
「そうだな。」笑顔を見せる遥斗。

水族館にて・・・・
「いろんな生き物がいるね。」
「うん。」

「えっ、これがハリセンボン?」
「普段はこういう形。攻撃されそうになるとトゲを立てて身を守るんだ。
ほら、こんな風に。」
「へーっ、なんか麻生君みたいだね。」
「・・・・」

「こっちは?」
「クマノミ。一つのイソギンチャクに家族で住んでんだ。」
「へーっ、可愛い家だね。」
「なんかお前ん家みたいだな。
んで、このちょこまかしてるのが親父さん。」
亜也が思わず笑う。遥斗も笑顔がこぼれる。

イルカの泳ぐ姿を見て亜也は、
「気持ち良さそう。
でも・・・・、どうして水槽にぶつからないで、こんなにうまく泳げるんだろう。」
「イルカの声!!」
「声?」
「人間の耳には聞こえない、超音波の声を出して、跳ね返って来た音で周りにある物の位置を確かめてるの。」
n100

「そうなんだ。」
「その声を使って遠くにいる仲間のいるかと会話をしているらしい。」
「ふーん。私たちには聞こえない、秘密のおしゃべりか。聞こえないかなあ。」
ガラスに耳を当てて聞こうとする亜也。
「人間も遠くにいる人とそんな風に喋れたら良いのにね。」
亜也を見つめていた遥斗は、
「ちょっと待ってて。」
とどこかへ行ってしまう。

遥斗は亜也にイルカの携帯ストラップを買って、つけてあげる。
「イルカほど便利じゃないけど。」
「ありがとう。」
「お茶、買ってくるわ。」

一人になった亜也に声をかける親子。
「イルカの水槽って、どこだかご存知?」
「ペリカン広場の向こうに。」
「ん?」
「ペリカン広場・・・・」
不審がる親子。
「その上をまっすぐ行って・・・・」
「はい・・・」
「えっと、あっち。」指で指す亜也。
「あっちね。どうもありがとう。」

戻ってきた遥斗が、
「どうした?」
「はっ・・・、ううん。」

「今日はありがとね。」
「うん。」
バスがやって来た。
「あっ。」
急ごうとした遥斗だが、亜也に合わせて歩き、バスに乗り遅れる。
「タクシーにしよう。」
「・・・・」
「わりい、俺がちゃんと時間調べなかったから。」
「ううん。」

遥斗はタクシーを止めようとするが一台、また一台と通りすぎていく。
明らかに空車だったけど、亜也の姿を見て、乗車拒否だね。完全に。

そこへ運悪く雨が降ってきた。
「向こうへ行こうか。」
亜也の車いすが段差にはまり、動けなくなる。
激しくなる雨・・・・。
n101

遥斗はきていた上着を亜也にかぶせ、車いすを必死に押す。

帰りが遅いのを心配する瑞生たち。
亜也の携帯にようやく繋がった。
「あっ、やっと通じた。
おい、亜也か。今どこだ?へっ?」

亜也と遥斗は瑞生たちが手配した福祉タクシーに乗って帰ってくる。
出迎える瑞生や潮香そして亜湖。
「全然大丈夫だから。」亜也が言う。
亜也にタオルをかける潮香。
「俺・・・。」
「何してんのよ!!風邪引いたらどうするのよ。」怒鳴る潮香。
それにびっくりする瑞生や亜湖、そして亜也だった。
n102

「すいません。」
「すぐに着替えような。風呂も沸いてるからさ。」瑞生が言う。
「とにかく、麻生君も上がって。」
亜湖が心配そうに見つめる。
遥斗はしばらく雨の中、立ち尽くすだけたった・・・・。

「亜也は?」
「大丈夫。眠っちゃった。電気毛布入れといたから。」潮香が言う。
「僕の責任です。本当にすみませんでした。」肩を落とす遥斗。
「さっきはごめんなさいね。怒鳴ったりして。」
「ほら、もういいから、足崩せよ。」
「顔、あげて、麻生君。」
ゆっくり顔を上げる遥斗。まだ、正座のまま。
「麻生君には本当に感謝してんのよ。亜也のこと、気にかけてくれて。
こんな風に誘ってくれて、亜也もすごく喜んでいると思う。
でもね、今の亜也はいろいろ、気をつけなきゃいけないことが多くて。
元気そうに見えるかもしれないけど、身体調子もそんなにいいわけじゃないの。
軽い風邪引いただけでも、合併症を起こして、肺炎になっちゃうかもしれないの。
普通の人には小さなことでも亜也にとっては、命取りになることがあるの。
楽しいだけじゃいられないの。もう、昔のようにはいかないの。」
n103

「まあ、今日の所は無事だったんだし、亜也のことをお前一人に任せたのは俺達なんだからさ。
お前が悪いわけじゃないんだからさ。」
「すいません。・・・・すいませんでした。」
亜也は眠れず、三人の会話を聞いてしまう。その表情は切なそうだった・・・

遥斗は帰っていく・・・。父の言葉が蘇ってくる。
『どれだけの覚悟があって、あの子と関わっているのかと聞いているんだ。
今が楽しいからそれでいい。そんな自分勝手な考えではすまないんだ。』
そこに遥斗の携帯が鳴る。発信者を見て、少し考える遥斗。
「今日は・・・・ごめんね。いろいろ迷惑かけちゃって。
さっきお母さんが言ってたこと・・・、あのね・・・」
「ごめん。雨で、良く聞こえない。」
「やっぱり、・・・・・聞こえにくいかな?」
「・・・・そんなことないから!!大丈夫だから。」
n104

「もう、前にみたいにはいかないんだね。
車いす、押してもらうことはあっても、もう一緒には歩けないし。
雨に濡れたぐらいで、大騒ぎさせちゃうし。きっと、そのうち話せなくなって、電話も出来なくなっちゃうんだろうね。
もう、全然違うね。東高にいた頃とは。」
「・・・・」
「麻生君とはもう、住む世界が違っちゃったのかも。」
「・・・・」何も言えない遥斗。
携帯を握りしめて、泣く亜也・・・・。
雨の中、立ち尽くす遥斗・・・。

亜也は主治医の水野の元で、発生のリハビリをしていた。
「焦らなくてもいいよ。ゆっくり発音してごらん。
口を大きく開けて、一音一音しっかり。」
発声の練習を続ける亜也。それを見つめる水野。

「発生のリハビリは寄宿舎でも根気よく続けてね。」
頷く亜也。
「実生活で不便感じてる?」
「声が出しにくくなったような気がします。」
「そっか、でも、今だってこうして僕と話してるだろう。
話す時に大切なのは、伝えたいと言うこちら側の気持ちと、受け取りたいと言う相手側の気持ちなんだ。
伝えることを諦めちゃいけない。聞く気持ちがある人には、必ず伝わるから。」
「・・・はい。」頷く亜也。

遥斗は図書館にきて、再び勉強している亜湖に会う。
「おっ。」
「あっ。」
二人で図書館の外に出る。
「お前、良くがんばるなあ。
そんなに必死になるほど、いい高校でもねえぞ。」
n105

「私ね、ずっと思ってたんだあ。何で亜也姉ぇなのって。」
「・・・・」
「病気になったのは私じゃなくて、何で誰にでも優しい亜也姉ぇなのって。
神様は意地悪だから、亜也姉ぇみたいな人を病気にしたのかな。
だったら、私が健康でいることも何か意味があるのかな。
私、亜也姉ぇの代わりに東高を卒業したい。
亜也姉ぇの叶わなかった夢だから。」
「・・・・」
「私なんかが亜也姉ぇのために出来ること、今はこれくらいしかないんだけどね。」
「・・・・」
「出来ることあるのに、しないでボーッとしているなんて、そんなの私、絶対嫌だから!!」
「・・・お前さすがだな。」
「へっ?」
「さすが!!あいつの妹だな。」
笑顔がこぼれる亜湖。

遥斗は友人と一緒に下校中、寄る所があると言って、走り出していく。
遥斗は養護学校へ来た。
花に水をまいている亜也に近づく遥斗。
「久しぶり。」
「・・・・」
「電話出来なくて、直接来た。」
「・・・・」

亜也の脳裏には水野の言葉が浮かぶ。
『聞く気持ちのある人には、必ず伝わるから。』
亜也は思い切って話し始める。
「今日ね、夢、見たん・だ。」
「夢?」
「うん。いつも、見る、夢の中ではね、歩いたり、走り回ったり、自由に動けるの。初めて麻生君と出会った頃みたいに。
でもね、今日の夢は、違った。
私、・・・・・車いすに乗ってた。夢の中でも、私は、身体が、不自由、だった。」
亜也を見つめる遥斗。
涙ぐみながら亜也は続ける。
「自分の身体のこと、認めているつもりでも、、心の底では、認めてなかったのかも。これが、私なのにね。」
n106

「・・・・俺の今の気持ち、言っていいか?
ずっと先のことなんて、わかんない。
けど、今の気持ちなら、百%嘘がないって、自信持って言える。
俺、お前が話すなら、どんなにゆっくりでもちゃんと聞く。
電話で話せないなら、こうやって直接会いに来る。
俺イルカじゃねえし、お前もイルカじゃないし。」
「・・・・」
「お前が歩くなら、どんなにゆっくりでも、一緒に歩く。
今は頼りにならないかもしれないけど、いつかお前の役に立ちたい。
昔みたいにいかなくても、そういう気持ちで繋がっているから、住む世界が違うとは思わない。」
「・・・・」涙ぐむ亜也。
「俺、お前のこと、・・・・好き。・・・・なの。・・・・好きなのかも。・・・・多分。」
「・・・あり・がと。」涙を流しながら亜也は言った。
うつむく遥斗、遥斗を見つめる亜也・・・・。

『朝の光

この学校の玄関前に
壁が立っている。
その壁の上に朝の光が白んで見える。
いつかは 見上げて
そっとため息をついた壁だ
この壁は 私自身の障害
泣こうがわめこうが 消えることはない 
けれど この陽のあたる瞬間が
この壁にもあったじゃないか
だったらわたしにだって
見つけ出そう
見つけに行こう』

亜也はまどかに言われたように寄宿舎での生活のリズムを作る。

遥斗は進路希望調査表に
「常南大学医学部」と書いた。

掲示板の亜也の詩を見て、
「へーっ、亜也ちゃんが書いた詩か。」高野が言う。
「こういう視点、持っている子なのよね。」まどかが言う。

亜也の部屋に家族が訪ねてきた。
「みんなどうしたの?」驚く亜也。
「亜也にちょっと用事があってね。」潮香が言う。
「いの一番に、亜也に知らせたくてな。」
「奇跡が起こったよ!!」
東高野制服を着た亜湖が入ってくる。
「亜也姉ぇ、私受かったよ!!」
「・・・・」さらに驚く亜也。
n107

「亜也姉ぇの着ていた制服で、代わりに東高卒業するからね。
安心して。亜也姉ぇの夢、私が引き受けたから。」
頷く亜也。目には涙が浮かんでいた。

『足を止めて、今を生きよう。
いつか失ったとしても、諦めた夢は
誰かにゆだねたっていいじゃないか。』

『人は過去に生きるものにあらず
今出来ることをやればいいのです』

『マ行、ワ行、パ行、ンが言いにくくなってきた。
声にならず空気だけが抜けていく。
だから相手に通じない。

最近、独り言が多くなった。
以前は嫌だったけど、口の練習になるから大いにやろう。
しゃべることに変わりはない。』
「1リットルの涙より」

時間の進み具合が早くなってますね。仕方ないことですが、少しわかりにくいです。

遥斗はとうとう決意しましたね、医者になることを。
将来のことはわからないけど、今時分で出来ることを考え、多分亜也の支えになれればと思って、医者への道を志したのでしょう。
それはまた亡くなった兄の夢を受け継ぐことでもあります。

亜湖はがんばりましたね。亜也の夢を引き継ぐために。

明日美は亜也にとっては良き先輩ではあるけれど、将来の自分を見ることにもなる。
そんな彼女と暮らすことは不安で一杯でしょう。
でも、本当の意味で、亜也はこの病気を受け入れたことによって、その不安は消えていくでしょう。

明るい二人を見ていると、逆にこちらが辛くなってきます。
残り二回です。しっかり、亜也のがんばる姿を見つめていきたいです。

公式HPはこちら

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1リットルの涙第八話「1リットルの涙」
1リットルの涙第七話「私のいる場所」
1リットルの涙第六話「心ない視線」
1リットルの涙第五話「障害者手帳」
1リットルの涙第四話「二人の孤独」
1リットルの涙第三話「病気はどうして私を選んだの?」
1リットルの涙第二話「15才、忍びよる病魔」
1リットルの涙第一話「ある青春の始まり」


木藤 亜也
1リットルの涙?難病と闘い続ける少女亜也の日記
木藤 潮香
いのちのハードル?「1リットルの涙」母の手記
木藤 亜也
ラストレター?「1リットルの涙」亜也の58通の手紙
K
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レミオロメン
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posted by 直美 at 18:22| Comment(6) | TrackBack(11) | 1リットルの涙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして、05です。TBありがとうございます。文字で見ても頭の中でよみがえりますね。いいですね。
Posted by 05(ゼロゴウ) at 2005年12月09日 19:37
はじめまして。

>文字で見ても頭の中でよみがえりますね。いいですね。

そう言ってもらうだけで、書いたかいがあります。
ありがとうございます。

Posted by 直美 at 2005年12月09日 19:58
はじめまして!TBありがとうございます。
ブログ凄いですね!!
亜也の前向きな笑顔のウラを考えると
かなり辛いですが、
ホント毎週「力」貰えますよね!!
Posted by ファンタ at 2005年12月09日 20:43
はじめまして。

>ブログ凄いですね!!

ありがとうございます。量では誰にもまけません。(笑

>亜也の前向きな笑顔のウラを考えると
かなり辛いですが、
ホント毎週「力」貰えますよね!!

ほんとですね、亜也のがんばりに負けれられませんね。

あと二回です、応援しましょう。
Posted by 直美 at 2005年12月09日 21:19
TBありがとうございます。
亜也の最期はどう描かれるんでしょうか?
亡くなるシーンがあるのか?それとも亡くなったあとの時間経過後なのか?今から心配しています。
Posted by redq at 2005年12月10日 05:04
こんにちは。

>亜也の最期はどう描かれるんでしょうか?

どうなるんでしょうね、気になりますね。

>亡くなるシーンがあるのか?それとも亡くなったあとの時間経過後なのか?今から心配しています。

どんな描き方にせよ、辛い結果ですよね。それは初めからわかっていたことですが、こうしてラストが近くなると、やはり辛く、哀しいです。
Posted by 直美 at 2005年12月10日 12:56
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Weblog: 斎藤小百合
Tracked: 2005-12-09 19:09

9 リットルの涙
Excerpt: 毎回楽しみにしてる1リットルの涙。 9リットルの涙。 今回は、遥人が亜也に告白し
Weblog: <今日のスペース>
Tracked: 2005-12-09 19:31

きれいな涙と汚い涙/[1リットルの涙]'05.1.6TUE
Excerpt: ■遥斗の存在[1リットルの涙] このドラマ「1リットルの涙」は、すごくうまく出来たドラマだなぁと思う。
Weblog: TV姉さんの『アレコレ言っちゃうよ!』
Tracked: 2005-12-09 19:41

いつかおまえの役に立ちたい!『1リットルの涙』#9
Excerpt: 第九話   「今を生きる」 亜也は、いよいよ養護学校で寄宿舎生活を送る事になりました。 親元を離れ、必死で病気と闘う亜也でしたが、ある日突然夢の中の自分も健康では無くなっていた・・・と遥斗..
Weblog: 私的空間.com
Tracked: 2005-12-09 23:59

【テレビ】1リットルの涙(第9話)
Excerpt: 亜也(沢尻エリカ)は養護学校で寄宿生活をおくることにになった。その初日、不安で一杯の亜也を、
Weblog: まぁ、お茶でも
Tracked: 2005-12-10 00:00

「1リットルの涙」の印象的場面を勝手に並べてみた(第9話)
Excerpt: 亜也は電動車椅子を手に入れた。凹凸のない場所でなら、自分で自由に移動ができる。理加が小学校に上がり、このドラマが始まってから劇中(第1話??第9話冒頭まで)で1年が経過した事になる。 ? ..
Weblog: さざんカルビ
Tracked: 2005-12-10 05:04

●1リットルの涙#9
Excerpt: -嵐の前のナントカでしょうか。 今回は、静かに忍び寄る病魔の再認識を見たような気がします。 話す事、伝える事、聞く事。現代の携帯電話というアイテムを使って、テーマを掲げてきていたのが、新しい。 ..
Weblog: ルーのTVビバ★ライフ(漫画イラスト発信中)
Tracked: 2005-12-10 06:57

ドラマ「1リットルの涙」第9話
Excerpt: 養護学校へ転校した亜也が生活する部屋はふたり部屋です。ルームメイトは、同じ病気と闘うひとつ年上の少女・明日美(大西麻恵)です。
Weblog: みょうがの芯
Tracked: 2005-12-10 15:20

『1リットルの涙』第9話
Excerpt: 最後の最後に。。また泣いた。。次回予告で、また泣いた。。『1リットルの涙』 第9話 「今を生きる」 ◆キャスト◆池内亜也(15) … 沢尻エリカ池内潮香(40) … 薬師丸ひろ子麻生遥斗(15) … ..
Weblog: strの気になるドラマ気になるコト
Tracked: 2005-12-10 19:03

1リットルの涙 〜第9回〜
Excerpt:  自分の伝えたい言葉が伝えられないもどかしさと言うのは一体どんな気分なんでしょうか?いま、こうしてパソコンに向かいながら自分の頭でつむぎ出した言葉を文字として皆さんに伝えられることがものすごく幸福なこ..
Weblog: いわぴいのドラマ日記
Tracked: 2005-12-11 07:47

9 リットルの涙
Excerpt: 毎回楽しみにしてる1リットルの涙。 9リットルの涙。 今回は、遥斗が亜也に告白し
Weblog: <今日のスペース>
Tracked: 2005-12-13 02:28
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