2005年12月05日

1リットルの涙第八話「1リットルの涙」

バスケ部の新人戦が終わった。
n65

「今日の試合はまりのおかげだよ。」早希(松本華奈)が言う。
「二人とも新人戦突破、おめでとう。」亜也(沢尻エリカ)が言う。
「ありがとう。」まり(小出早織)と早希が言う。
「次の試合も応援きてくれるよね。」
「絶対行く!!」
「よし!!」
「がんばってください。」亜也の車いすを押す亜湖(成海璃子)が言う。

そこへ保護者会の終わったPTAたちが出てくる。
「私、池内さんの問題については、このままにするつもり、全く有りませんから。」

亜也たちはPTAの表情を見て、心配する。
「なんか有ったのかな?」早希が言う。
「お母さんだ。」亜湖が言う。

潮香(薬師丸ひろ子)が思い表情で出てくる。
亜也たちに気づいた潮香は、笑顔を見せる。

家に戻った亜也たちは、今で、理加(三好杏依)が、歌を披露している。
「卒園式の後の、お別れ会でやるの。うさぎさんの耳付けてね。」潮香が言う。
「理加、すっごく上手。」
満面の笑顔で答える理加。
「あれ、どうしちゃったんだろう。
なんだか、涙出てきた。」瑞生(陣内孝則)が言う。
「なに、涙ぐんでんのよ。
もう、完全に爺だね。」亜湖が言う。
「年のせいにするな、
俺はな、お前と違って心が綺麗なだけだ。」
「ふぁふぁふぁんふぁんふぁん♪・・・・・」理加がピアノを弾く真似をする。
「ピアノの弾き方ってこれでいいの?」弘樹(真田佑馬)が言う。
「うち、ピアノなんてないから、しょうがないじゃん。」亜湖が言う。
「パパ、ピアノ買って。」おねだりする理加。
「はい、理加ちゃん、こっちおいで。はい、忘れた、忘れた・・・」
理加に暗示をかける瑞生だが、
「忘れるわけないでしょ。」と亜湖に突っ込まれる。

「ねえ、お母さん、保護者会、なんか有ったの?」亜也が聞く。
瑞生や亜湖が不安そうに潮香を見つめる。
「せっかくの機会だからね、これからも亜也をよろしくお願いしますって、みなさんにご挨拶してきたの。」
「それだけ?」
「そうよ。じゃあ、いただきましょ。」笑顔ではぐらかす潮香。
亜也は何かを感じ取っているようだ。

その頃、麻生家でも、保護者会の話題が出ていた。
妻の佐和子(兎本有紀)は、夫・芳文(勝野洋)に、
「予想以上に荒れたわ、保護者会。」
「池内さんのことか?」
「ええ、子供に重い障害の子の手助けをさせるのは不安だって言う声が多くて。
西野先生も二年生から養護学校を考えてはどうかと、池内さんのお母さんにはお話ししたみたいなの。」
そこへ遥斗(錦戸亮)がその話を廊下で聞いて、部屋に入ってくる。
「難しいんですか?
あいつが、池内が普通の高校に通い続けるのは?」
n66

「あの子は、進行性の病気だ。
病状の進む速度も速い。今、環境のいい場所に移って、そっちに慣れておくことは、彼女にとってもいいことかもしれない。」
「・・・・・」
「あの子が背負っている荷物は、お前が考えているより遥かに重い。
子供のお前が、簡単にどうこうしてやれる問題じゃないんだ。」

一方、夕食の終わった池内家では、潮香と瑞生が話していた。
「授業が遅れて迷惑だって。
子供の成績が落ちてるって。
亜也には、もっと別の環境があるんじゃないかって。」潮香が言う。
「そりゃ、仕方ねえよ。
だってさあ、親ってものは自分の子供のことしか考えられねえもんだろう。
いいじゃないか、他の親になんて言われようと、俺達は俺達で亜也のことだけ考えて、あいつのために出来ることをしてやればいいんだよ。」
「そうよね。」

授業中、必死でノートを取る亜也。それを見つめる遥斗。
担任の西野は亜也に気づきはするが、授業を進めて行く。

昼休み、亜也はまりに車いすを押してもらいながら、
「ほんとごめんね、いつも昼休みなくなちゃって。」
「そんなの気にしないの。平気、平気。」早希が言う。

そこへいろんな制服を着た生徒達が学校見学に来ているのを見る。
「あの子たちは?」
「今年受験する中学生じゃない?きっと下見にきたんだよ。」
「そっか、四月から私たちも先輩になるんだ。」まりが言う。
亜也は中学生たちを見つめていた。

『去年の春、私の胸の中は東校に入学する期待で一杯だった。
今の私のには、いったいどんなはるがまっているんだろう・・・・』

亜也はいつものように放課後、迎えを待つ間、生物室で勉強していた。
そんな亜也を見て、
「よくやりますね。」
「全国模試、もう来週でしょう?
こんぐらいしか、がんばる時ないからさあ。」
「・・・・」
遥斗は写真を見始めた。
「どうしたのそれ?」亜也が聞く。
「耕平がさあ、クラスの仕事、ほったらかしにしてだよ。
卒業アルバム作る時用にさ、1年ごとにまとめておくんだって。」
遥斗が見せた写真にはこれまでも思い出が沢山詰まっていた。
亜也はその中から、合唱コンクールの写真を手にした。それを見つめて、
n68

「私、卒業出来るのかな?」
「何言ってんだよ。」
「わかってはいるんだ。
これ以上症状が進んだら、いつかは私が自分で決断しなきゃいけないんだって。」
遥斗は亜也から写真を取り上げ、
「先のことばかり考えてどうすんだよ、バカ。
お前、前に俺に言ったろ。今出来ることをがんばるんだって。
これからもお前がしてなんかがんばる度にクラスのアルバムにこういう写真がどんどん増えて行くんだよ。」
「どうしちゃったの?麻生君。」
「あん?」
「まるで、良い人みたい。」笑顔で見つめる亜也。
遥斗は、
「うるせえよ。」
「私、ほんとは怖いんだ。
この学校やめたら、その時点で私の人生、何かが終わっちゃうような気がして。」
亜也の本音でしょうね。亜也は今まで、たくさんのものを諦め、失っていますから。
遥斗はほんと良い人です。対等に向き合ってます。

その日の夕食の時、潮香が
「ねえ、みんなちょっと聞いて欲しいの。
お母さんね、三月一杯で仕事辞めようと思うの。」
驚くみんな。
「保健センター、辞めちゃうの?」亜湖が聞く。
「何で?」弘樹が聞く。
「家にいてお店を手伝ったり、お姉ちゃんの学校に一緒に行ったり、いろいろしようと思ってるの。」
「でも、そんなの悪いよ。私のせいで・・・」亜也が言う。
「そうじゃなくて、お母さんがそうしたいの。」
「あ、でもお母さんの給料なくなるとうちの家計は?」亜湖が心配する。
「俺、今度から飯、半分にするわ。」弘樹まで気を使う。
「理加もピーマン、半分にする。」
「お前、それ嫌いだからだろ。」弘樹が突っ込む。理加ちゃん、可愛い。
「バカやろう!子供が金のことなんか心配するんじゃねえ。
我が池内豆腐店は今、業績うなぎ登りなんだから。」
「その割にはお小遣いいっこうに上がらないと思うけど。」亜湖が言う。
「うざ!!」

夜、二人きりになった瑞生と潮香は、
n69

「お前さ、ほんとにそれで良いのか?」瑞生が聞く。
「うん。お金は何とかやりくりするから。」
「いや、そうじゃなくて。
子供たちの世話が有っても、店の手伝いが有っても、すーっと続けてきた仕事じゃないか。
四人も子供を産んで、そのつど産休もろくに取らなくてさあ、それでも二十年間、ずっと続けてきた仕事じゃないか。
俺さあ、この店継ぐまでさんざん職、転々としたろ。
だから、若いうちから私の生き甲斐はこれだって決めて、胸張って働いているお前見て、正直うらやましかったんだよ。
だからよ・・・・」
「いいの。」
「いや、でも・・・・」
「いいのよ。
今までは町の、みんなの保健士だったけど、これからは家族専属になる。」
「そうか・・・」

自分の部屋では日課にしているノートを書いている亜也。
『お母さんが保健士の仕事を辞めると言った。
いつもそばにいてくれると思うと、やっぱりホッとするけど・・・・』

亜湖が声をかける。
「ねえ、亜也姉ぇ、もしもさあ・・・・」
「うん?」
「もしもの話だよ。」
「何?」
「・・・・まあ、いいや。何でもない。」亜湖が言いたかったことはなんだろう?

亜也の担当である水野(藤木直人)も研究に余念が無かった。
彼の元を尋ねる芳文、
「麻生教授・・・・」
「実験の方はいかがですか?」
「あっ、はい、神戸医大の岡崎先生から脊髄小脳変性症のモデルマウスを提供していただけることになりました。」
「そうですか。
実感が始まるとどうしても、かかりっきりになるから大変ですね。」
「ええ。」
「・・・・・長年医者をやっているとね、患者のがんばりに勇気を貰うことが多いんですよ。
励ましたつもりでも、いつの間にかこっちの方が励まされてしまうような・・・・。
君も感化された一人かな?彼女に。」
「そうかも知れません。」
「私に出来ることが有ったら、いつでも言ってください。」
「はい。ありがとうございます。」
麻生教授が来た真意ってなんだろう。ただ、励ましに来ただけとは思えないけど・・・。

学校にて・・・
階段を下りようとしている亜也。亜也を支えるまり。そこへ通りかかる男子生徒。
「持ってってやろうか。」
「でも・・・・」
「あー、いいよ、気にすんなって。」
「ありがとう。」
それを見てた圭子(葵)と美歩(川原真琴)は、
「どう思う?」
「親たちも騒いでるらしいね。」
「きっと、これからもこうなんだよ。
池内さん一人にみんなが付き合わされてさあ。」圭子は不満げに言う。ひっぱたいてやりたい、って思うけど、実際問題、そこにいたらそう思うのが自然なのかな?哀しいけど。

圭子は遥斗を追いかけて、
「遥斗は知ってたんだ。
だから、ずっと優しくしてあげてたんだね。」
「はっ?」
「池内さん、治らない病気なんでしょ。」
圭子の腕を引っ張り、遥斗は、
n70

「お前、何バカなこと言ってんだ!!」
「だって、みんな言ってるよ。
いつか寝たきりになるって。」
遥斗は圭子を壁に押し付け、
「いい加減にしろよ。
二度と、そんな事言うな。」遥斗は去って行く。好きな遥斗に言われたことで、圭子の不満はもっと増えるんだろうね。

瑞生は車いすを見にきていた。
電動車いすは乗り手に優しそうだったが、買い手には厳しい値段だった。
四十二万、補助が出るとしてもそう簡単に買えるものではないよね。

亜也が部屋から降りてきたら、瑞生と潮香が話していた。
「えっ、お父さん、本当に手伝うの?」
「ああ、昨日聞いたんだけどさ、鉄工所の健ちゃんが若いものがちょうどやめて、人手が足りないって言うんだよ。」
「お金のことなら、しばらく・・・・」
「いや、休みの日とさ、仕事が終わってからだけでいいって言ってんだよ。
そんないい条件、めったにないしさ。
ほら、俺、手先が器用だからさ、悪くねえだろ。」
「でも、そんなに働いたらいくらお父さんだって・・・・」
「お前は心配しなくていいんだよ。亜也の面倒だけ見てりゃいいんだよ。
だいたい、子供たちに家計の心配までされたら、かっこつかねえしよ。
あいつらに言うんじゃねえぞ!!」
「了解。」しぶしぶ了解する潮香だった。
亜也はこの会話を聞いてしまった。

亜也はまりや早希とともに全国模試の会場へ向かっていた。
あくびする早希を見て、
「大丈夫?早希。昨日も遅くまで勉強してたの?」まりが言う。
「うん。」
「ごめんね。早起きさせちゃって。」
「ああ、平気。今回の模試は自信あるんだ。
いつもの三倍は勉強した感じ。」
「えらい!!」

亜也が階段を上がっている時にチャイムが鳴る。急ぐ生徒達。
「あっ、急がなきゃ。」亜也が言う。
「大丈夫だよ。亜也。」早希が言う。
急ぐ亜也は階段を踏み外し、まりとともに落ちてしまう。
「まり、大丈夫?」
「うん。」駆け寄る早希。
「まり、大丈夫?」

回りのものがこの事態に気づく。通りかかった圭子たちもこの光景を目にする。

治療の済んだ亜也。どうやら亜也は足を怪我したみたい。
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「亜也、今、お母さん来るって。」治療を終えたまりが言う。
「ごめんね。」亜也はまりの手の包帯に気づき、
「まり、その手。」
「ああ、大げさに巻かれただけ。一二週間固定すれば平気だって。」明るく言うまり。
「でも、今週試合だよね。」
「・・・・・」顔が曇るまり。
「ごめん。ほんとにごめんね、二人とも。」
「いいってばあ。謝んないでよ。ねえ、早希。」
「う・うん。」顔を背ける早希。怪我をしなかった早希の方が困惑な表情をしている。

クラスでは担任の西野が、
「みんな聞いてくれ。
池内は足をねんざして、今週一杯学校を休むそうだ。」
ざわつく教室。
遥斗は亜也のいない席を見つめる。

亜也の家では、瑞生が、
「俺、そろそろ行ってくるわ。」
「そうね。」
居間にいた亜也が瑞生と顔を会わす。理加がウサギの格好をしている。
「卒園式の出し物の衣装、出来たのか。いいじゃないか。」
亜湖が帰ってくる。
「亜湖、お父さんちょっと出かけるからさ、ちょっと鍋洗っておいてくれるか。」
「あー、だめ。ご飯の前に宿題やっちゃいたいから。」
「えっ?宿題?お前、頭どうかしたのか?」
「お父さんこそ、どこ行くの?」
「おれは・・・・、ほら、電話、電話。」
電話は潮香への仕事に関する電話だった。複雑な表情の亜也。

一人、自分の部屋にいる亜也。そこへ亜湖が入ってくる。
「良かったじゃん、包帯取れて。もうすぐ学校行けるね。」
「・・・・本当に行っていいのかな?」亜也がぽつりと言う。
振り返る亜湖。
「私、もうわかんなくなっちゃった。」
「・・・亜也姉ぇ、もしもの話していい?」
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「うん?」
「もしもさ、私が一杯勉強して、もしも来年東高受けて、
もしも万が一受かるようなことがあったらさあ、
私が一年生で、亜也姉ぇが三年でしょ。」
「・・・・」
「私、一杯手伝えると思うんだ。
学校の行き帰りとか、教室移動する時とか、
何か困った時、私一杯役に立てると思うんだ。
そうしたら、お母さんも仕事辞めないで平気でしょ。
だからさ、もうちょっとだけ待ってよ。もうちょっとだけがんばってみてよ。」
「ありがとう。亜湖。」涙を浮かべる亜也。
「言っとくけど、もしもの話だからね。」
「了解。」笑う亜也。
亜湖が前に言おうとしていたのはこのことだったんですね。勉強がんばっていたのも、東高に行きたいためだったんですね。
亜湖っていつの間にか、ほんといい子になりましたね。亜也を見ているから、自然とそうなるんでしょうね。このシーン、涙が止まりませんでした。

久しぶりに登校する亜也、いつものようにまりと早希が待っていた。
挨拶を交わす三人だが、なぜかよそよそしい感じ。潮香も何か感じたかも。

教室へ入ると、ざわついていたのがシーンとなる。圭子や美歩の目がきつい。
この変な雰囲気を感じる遥斗。そして亜也・・・。
n73

「おはよう。」それでも挨拶する亜也が痛々しい。と言うかクラスが冷たいよ。あんまりだよ。

亜也は病院へ行くために早退する。
校門まで送ると言うまりに対して、「大丈夫、まだ、時間あるから一人でゆっくり行くよ。」
まりと早希はクラスへ戻る。
担任の西野がホームルームをはじめた。そこへ圭子が、
「先生、クラスで話しあいたいことが有るんですけど。」
「そうか、じゃあ手短にな。」
圭子は立ち上がり、
「池内さんのことについて話しあいたいんです。」
クラスがざわつく。西野も驚く。
圭子は続ける。
「今、池内さんのことがPTAで問題になっていること、みんなも知ってると思います。
クラスとしても意見をまとめた方がいいと思います。
私は池内さんに合わせることによって、クラス全体の活動に支障が出ていると思います。
池内さんのためにも、どうしたらいいか話しあった方がいいと思います。」
そこへ忘れ物をした亜也が戻ってきて、話を聞いてしまう。
「先生、ずっとこのままで行くんですか?」
「・・・・」
「ちょっと、このままじゃ辛いかも・・・」圭子の連れの美歩が言う。
「同情はするけど、授業が遅れるのだけは勘弁して欲しいよな。」
「俺もまあ、そう思う時有るけど。でも、池内に早く歩けったって、無理な話だし。」本多が言う。
「池内さん、可哀想です。五分とか、十分くらいなら待ってあげましょうよ。」
「でもさあ、受験とか近くなってくるとさあ・・・」
圭子が、
「杉浦さんたちはどうですか?」
まりは立ち上がり、
「亜也はいろいろ悩んで、でも、必死ですごくがんばってるんだよ。
ほんの少し、支えてあげるくらい迷惑にはならないでしょう。」
「でも、杉浦さん、池内さんのせいで怪我してバスケの試合出られなかったんだよね。」美歩が言う。
「それはそうだけど・・・」
圭子はさらに、
「松原さんは?」
「・・・私は、毎日校門まで迎えに行ってて、教室移動もほとんど一緒で、亜也が大好きだし、友達だからやってるんだけど、・・・でも、たまに、結構きつい時もあって・・・・」
「早希・・・・」まりが驚く。
「私、勉強とか器用に出来るタイプじゃないし、部活も有るし、・・・・たまには朝寝坊したい・・・と思う時もあったけど・・・・」泣きながら話す早希。
「限界じゃないの。」
「これから、ずっとって考えるとさあ・・・・」
「助けてあげたくても無理じゃない。」
ざわつく生徒に、西野は、
「わかった。みんなの意見はわかった。
この意見についてはちゃんと池内の家族と相談して・・・・」
「お前ら、ずるいよ。」遥斗が言う。みんなが遥斗を見る。
「あいつの前では良い人の振りして、親切にして、あいつが何度ごめんねと言っても平気、平気って繰り返して、あいつがいない時にこんな話して。
本当は迷惑でした。ずるいよ!!」
「麻生、あのなあ・・・」西のが止めようとするが、遥斗は立ち上がり、
「嫌だったら、もともと親切なんかすんなよ。
面倒だ、困ってる、疲れるってあいつの前で言えよ。
そしたら、あいつきっとわかったよ。助けてもらわないですむ方法だって考えたよ。」
「麻生、お前の言いたいことはよくわかる。でもな・・・」
「お前もだよ!!」
n74

「お前、お前って・・・」西野は憤慨する。
「なんで、あいつより先に親に話するんだよ。
毎日、直接顔合わせているあいつになんで話聞いてやんねえんだよ。
外堀埋めて、追い込むなまね、すんなよ。」
「・・・・」反論出来ない西野。
「先生があいつとちゃんと向きあってたら、あいつだってきっと自分で・・・」
遥斗はドアの外にいる亜也に気づく。
「池内・・・」
みんなが振り返る。
「亜也・・・」まりが言う。
亜也はみんなに気づかれ、戸惑いながら、教室へ入り、
n75

「ごめんなさい。忘れ物しちゃって。」気づかう亜也に誰も何も言えない。
亜也は淡々と忘れたノートを取り、再び教室をでて行く。出て行った亜也を追いかけて行く遥斗。
亜也を見つめる遥斗。
階段の前で、「乗れよ。」そう言ってしゃがむ。
亜也を背負って階段を下りて行く遥斗。二人に会話はいらない。
n76

車いすに乗り込み、遥斗に押されて、校舎を出て行く。
しばらくして、こらえ切れずに思わず泣き出す亜也。何も言わずに、ハンカチを差し出す遥斗。
亜也は遥斗を見て、
「なんか言ってよ。ペンギンの話とか、魚とか、犬とか、そう言うのもうネタ切れ。
この際、作り話でいいから、嘘ついてももう怒んないから・・・・」
「・・・・なんも出来ない。
あいつらに偉そうなこと言って、俺だってあいつらと同じだよ。
お前の病気、知ってて、お前が辛いのずっと近くで見てて・・・・
でも、結局、なんも出来なかった。
頭でかっちで口先ばっかで、親父の言う通りだよ。ただのガキで・・・・」
「そんなことないよ。」遥斗を見上げる亜也。
「・・・・・」
「いつも励ましてくれた。
誰にも言えないような話、聞いてくれた。
沈んでいる時に、笑わせてくれた。
そばにいてくれた!!私が辛い時は・・・」
亜也を見つめる遥斗。
「・・・いつも一緒にいてくれた。」
粉雪が舞始めた・・・。亜也の頬を伝う涙・・・・。
あやは精一杯の笑顔で遥斗に、
n78

「ありがと。麻生君。」
車いすを動かし始める亜也。それに気づき遥斗は車いすを押そうとすると、
「バイバイ。」
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遥斗は車いすの取っ手を握ったまましゃがみ込んでしまった・・・・

クラスでみんなの本音が次々と出てきて、聞いているのがほんと辛かったです。
でも、それは仕方ないことかも知れない、その場にいなきゃわからないことだし。
進学校でなかったら、また違ったのかも知れませんけど。
でも、遥斗が言ったように、みんなずるい、見せかけの優しさはかえって相手を傷つけるだけ。遥斗のように向きあって、本音を言えばいい。

遥斗が西野に「お前だよ!!」って言った時はほんと胸がすかっとした。先生が手本を見せるべきだったんだよね。亜也に対する態度を。

亜也は聞いていて、辛かっただろうなあって思います。自分のいる場所、いたい場所、失いたくない友達から、あー言う風に言われて、哀しいでしょうね。

亜也は家族と理加の卒園式に出ていた。
理加が登場すると瑞生は親ばかぶりを出していた。当然です。(笑

式も終わり、みんなで帰る亜也たち。亜也は、
n80

「お父さん。」と声をかける。
「うん?」
「私、お豆腐一筋のお父さんが好き。
世界一うまい豆腐作るって言って、自信持っていえるお父さんが好き。」
「なんだよ、いきなり。」
「お母さん。」
潮香が亜也の顔をのぞき込む。腕をつかみ、引き寄せ、
「保健士のお母さんも好き、二十四時間、町のみんなのこと考えて、人の喜ぶ顔を生き甲斐にしている、そんなお母さんが大好き。」
「亜也・・・・」
「だからさ、仕事辞めないでよ、お母さん。
お父さんも無理しないで。」
「何、言ってんだよ。」
「亜湖もヒロも理加も、みんな好き!!
こんな私のこと、お姉ちゃんと立ててくれるんだもん。
私、この家族が大好き!!
だから、みんながいるから私、どこに行っても平気だと思う。」
亜也は潮香の顔を見て、
「私、養護学校に行くね。」
驚く潮香。切なそうな瑞生、亜湖、そして弘樹。
亜也は明るく空を見上げた。

修了式、担任の西野が、
「池内はこの三学期を持って、別の学校に転校することになった。
がんばった池内に拍手しよう。」
みんなが拍手するが、力が無い。
潮香がやって来て、亜也を見つめる。
亜也は話し始める・・・
「知っている人もいると思いますけど・・・・・
私の病気は治りません。
治療法がないみたいです。
いつか、歩くことも、立つことも、話すことも出来なくなるとお医者さんに言われました。
この一年で・・・、当たり前に出来ていたことが一つ一つ出来なくなっていきました。
あーっ、夢の中では友達と喋りながら歩いたり、
バスケをしながら思いっきり走ったり出来るのに・・・・
目が覚めるともう自由には動かない身体があるんです。
毎日が変わってしまいました。
転ばないために、どう歩いたら良いのか、
どうすればお弁当を早く食べれるのか、
どうすれば人の視線を気にしないでいいのか、
一つ一つ頭の中で考えなきゃ、生きていけません!!
高校に行って、大学に行って、仕事をして、そんな風に思い描いていた未来が・・・・
ゼロになっちゃいました。
生きていく道が見つからなくて、
小さな希望の光も見えなくて、
病気になったせいで私の人生は壊れてしまったって、何度も思いました。
でも・・・、でも、哀しいけどこれが現実です。
どんなに泣いても、病気からは逃げられないし、
過去に戻りたくても、時間を戻せないし、
だったら、自分で今の自分を好きになってあげなくちゃって、そう思いました。
だって、この身体になってから初めて気づいたことが沢山あるから・・・・
そばにいてくれるだけで、家族って有り難いんだなあとか、
さり気なく支えてくれる友達の手が・・・、すごく温かかったりとか・・・・
n83

健康なことがそれだけですごく幸せなこととか、
病気になったからって、失うばっかりじゃありませんでした。
この身体の私が・・・・、私だって。
障害って言う重荷をしょっている私が今の私なんだって。
胸を張って生きていこうと思いました。
だから・・・・、養護学校に行くことは自分で決めました。
みんなとは生きる場所は違うけど、
これからは自分で選んだ道の中に、一歩一歩・・・、光を見つけたいから・・・・
そう笑って言えるようになるまでに私には少なくとも一リットルの涙が必要でした。
だから、もう私は・・・、この学校を離れても、何かが終わってしまうなんて、絶対に思いません。
みんな・・・、今まで・・・、親切にしてくれて、本当にありがとう。」
クラスのみんなが泣いていた。
亜也は迎えにきていた潮香と瑞生に連れられて、学校を出て行く。

遥斗はいても立ってもいられず、教室を出て、亜也の後を追う。
まりも続く、早希も、そしてみんなが駆け出していく。

「池内亜也!!」遥斗の声に振り返るとみんなが集まってきていた。
驚く亜也。
n84

やがて遥斗が、
「♪流れる季節の真ん中で
ふと日の長さを感じます♪」と歌い出す。やがてみんなも後に続く。
「♪せわしく過ぎる日々の中に
私とあなたで夢を描く
三月の風に思いを乗せて
桜のつぼみは春へと続きます
溢れ出す光の粒が
少しずつ朝を暖めます
大きなあくびをした後に
少し照れてるあなたの横で
新たな世界の入り口に立ち
気づいたことは一人じゃないってこと
瞳を閉じればあなたが瞼の裏にいることで
どれほど強くなれたでしょう
あなたにとって私もそうでありたい
瞳を閉じればあなたが瞼の裏にいることで
どれほど強くなれたでしょう
あなたにとって私もそうでありたい♪」

n85

亜也たち三人はみんな見送られながら、東高を後にする。

『いいじゃないか転んだって
また起き上がればいいんだから』

『転んだついでに空を見上げれば
青い空が今日も
限りなく広がってほほえんでいる』

『あたしは 生きているんだ』

『終業式まであと4日。
みんなが私のために千羽鶴を折ってくれているようだ。
一生懸命折ってくれている姿を
まぶたの裏に焼き付けておこう。
たとえ別れても、決して忘れないために。
でもーー
「亜也ちゃん、行かないで」と言って欲しかった。』
「1リットルの涙」より

とうとう学校を去っちゃいましたね。自分で決めたことが救いです。

亜也を見送る遥斗たちが歌った歌は合唱コンクールで歌った歌ですよね。
あの時はたいした感慨も浮かばなかったんですが、
今回こうして聞くといい歌だなあってあらためて思いました。
心に染み入りました。

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1リットルの涙第七話「私のいる場所」
1リットルの涙第六話「心ない視線」
1リットルの涙第五話「障害者手帳」
1リットルの涙第四話「二人の孤独」
1リットルの涙第三話「病気はどうして私を選んだの?」
1リットルの涙第二話「15才、忍びよる病魔」
1リットルの涙第一話「ある青春の始まり」


木藤 亜也
1リットルの涙?難病と闘い続ける少女亜也の日記
木藤 潮香
いのちのハードル?「1リットルの涙」母の手記
木藤 亜也
ラストレター?「1リットルの涙」亜也の58通の手紙
K
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レミオロメン
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posted by 直美 at 20:16| Comment(0) | TrackBack(1) | 1リットルの涙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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